まち歩きレポート

2017/4/1千住いえまち 『春のまち歩き+茶会』

日時:2017年4月1日(土)
集合場所:日の出町団地スタジオ
参加人数:一般参加者20名 いえまちスタッフ10名 計30名
参 加 費:1500円(お茶代(お菓子付500円)含む)

団地スタジオ主宰の上本さん。

 今年の千住いえまち春のまち歩き企画は、これまでまち歩きでもお世話になっており、そして昨年いえまち3年間の活動の集大成として作成した冊子「千住いえまち」で年代別にみる千住の建物(江戸期)でご紹介させて頂いた冨澤さまよりお声を掛けて頂いた事から始まりました。冨澤様は、いえまちのメンバーで大工さんである佐野さんのお茶の先生です。いえまちの活動がきっかけでお稽古に通っています。

 そんな関係から、冨澤さんより桜の季節にお茶を点てるイベントができないだろうか、とご相談頂いたのです。そんなことから実現した今回のまち歩きと茶会のコラボ企画。私たちいえまちのメンバーもとても楽しみにしておりました。

恒例、まち歩き出発前のショートレクチャー

いえまちメンバー 佐々木さんによる千住の歴史や地勢、まち歩きのマナーなどについてのショートレクチャー。

 1週間前の気温がこちらの期待ほど上がらず、桜の開花は5分咲き程度、当日の天候も雨が危ぶまれましたが、なんとか小雨がちらつく程度でのりきることができました。それでも足元が悪く肌寒いなか、集まって下さった参加者の皆さまには本当に感謝です。 集合場所はこちらも、まち歩きやイベントなどで何度もお世話になっている、日の出町団地スタジオさん。予定通り午後1時まず、団地スタジオを主宰されている上本さんに、建物のことや、行われている活動についてご説明して頂きました。続いてこちらも恒例のまち歩き出発前の、千住の歴史や地勢のショートレクチャーをいえまちスタッフの佐々木さんから受けてまち歩きの出発です。

リノベーション アートスペース

生憎の小雨でしたが、元気に出発です!

 団地スタジオを出発し最初のポイントであるアートスペース「ココノカ」さんへ向かいます。
 ココノカさんは木造2階建ての民家の外観はほとんど手を入れずに内部をリノベーションしてつくられたアートスペースです。

 学生が中心になって運営をしています。学生の小林さんが私達の到着を待ってくれていました。内部は木造の小屋組みを現したこじんまりとしたギャラリースペースです。当日は残念ながら展示準備期間中だったのでアートの展示はなかったですが、逆にその素朴なリノベーションの空間を堪能していただけたのではないでしょうか。

アートスペース「ココノカ」内部。柱や小屋組みは現しとし、アートの背景となる壁面は白く塗装。シンプルで素朴なギャラリー空間でした。
建物や学生主体による企画やイベントについて説明して下さった運営スタッフの小林さん。

千住いえまちに協力してもらい作る空間

ろじゆらデザイン主宰、いえまちメンバーでもある猪又さん。背後の建物の2階部分を現在リノベーション中です。
ろじゆらデザイン、リノベーション中の内部。4月15日はワークショップで壁に珪藻土を塗る予定です。

 ココノカさんを出発し、東口の学園通り旭町商店街を通り次の目的地「ろじゆらデザイン」へ。
 ここはいえまちメンバーである猪又さんのデザイン事務所です。4月よりこの地で活動を開始し築45年ほどの木造建築の2階部分を千住いえまち協力のもと、現在リノベーション中です。猪又さんから建物の話を聞き、2階の事務所を案内して頂きました。畳の床がフローリングに張り替えられ、押し入れがワークスペースに改装されていました。


桜並木を通り、柳原商店街へ

疎開道路の桜並木。5分咲き程でしたが奇麗で、春を感じる事が出来ました。

 ろじゆらデザインを出発し、路地からスカイツリーを見上げながら疎開道路へ出ます。戦時中に強制疎開地として収容されたものが、戦後に道路とされたもので、現在は荒川土手へと続く千住の桜並木として有名です。冒頭にも述べましたが桜は5分咲きというところでしょうか。足立区が明治の頃、桜の名所として知られていたこと、その後日米友好のシンボルとして桜の苗木がワシントンへ植えられ、その桜が今度は舎人公園へ里帰りをしたことなどお話ししながら桜並木を歩きました。


桜並木から柳原商店街に入ります。

 桜並木を300m程進むとそこから都内屈指の狭い通路幅で知られる「柳原商店街」へ進みます。
 小さい商店が軒を連ね、路地には木の電柱に設置された外灯(キデンキ)を見る事ができます。
 まち歩きの醍醐味の一つでもある食べ歩きも今回はタイムスケジュールの都合上、我慢の予定でしたが松村の稲荷ずしだけは我慢できず、いえまちメンバーが代金を預かって、商品を受け取って自転車で追いかけるという手段でサポートしました。商店街を抜けて荒川の土手へ向かいます。


柳原商店街にある大和湯。千住界隈の特徴でもある宮造りの銭湯を見ました。
稲荷ずしで有名な松むらさん。

3へ続く

荒川の土手から千住を一望

荒川土手で千住の地勢を再確認。

 荒川の土手で、改めて出発前のショートレクチャーで話された千住の地勢について皆で確認。 大正年間をかけて作られた人工河川である荒川放水路。鉄道や高速道路が交差しているその風景は千住が現在も交通、物流の要所となっていることを感じる事が出来ます。


荒川をあとにして最終目的地である冨澤家へ

冨澤家の前で冨澤様よりお話しを伺う。

 築170年程の冨澤家は浅草の橋場にあった旗本の下屋敷で、2度の移築を経て現在のこの地に存在しています。うち一度は荒川放水路をつくるための用地買収による移築です。住まいの中だけでなく、お庭や敷石などのお手入れがとても行き届いており、その暮らしぶりがとても素敵な冨澤さんです。


二間続きの和室を囲むようにしてお茶を頂きました。

 到着後、佐野さんと冨澤さんより建物の概要について説明して頂き、早速内部の見学をさせて頂きました。
 修復を終えた区の有形文化財でもある、入江長八の鏝絵「潮汲みの図」の前では皆さんが、その繊細な表現が左官技術である鏝によるものであることを知ると感嘆の声をあげていました。


 そして皆さんお待ちかねの茶会です。二間を繋げた和室を取り囲むように参加者が座り、まずはお菓子を頂きます。まち歩きをしてきた私達にとって、練り切り製で中は、こし餡の入った桜の和菓子はとても美味しく、優しく体に沁み入るようでした。水屋で点てて頂いたお茶を一人づつ目の前まで運んで頂きました。冨澤さんが「作法など気にしないで召しがってください」とおっしゃって下さったので、皆さんリラックスして一服をとても楽しんで飲む事ができました。

頂いたお菓子。目でも口でも楽しめました。
点てて頂いた抹茶。

 桜と共に季節を愛出るお茶会。皆さんとても素晴らしい体験ができたと思います。

 最後に皆さんで冨澤さんにお礼を言って、今回のまち歩きも無事にお開きとなりました。
 リノベーションの空間を感じ、建物の利用者から直接お話しを伺い、歴史ある冨澤家で冨澤さんからお話しを聞き、お茶を点てて頂く、今回はとても“いえまちらしい”まち歩きが出来たと思います。

 改めまして、今回ご協力頂きました、団地スタジオの上本さん、永井さん、アートスペース ココノカの小林さん、ろじゆらデザインの猪又さん、そしてお茶会にお誘い下さった冨澤さん、本当にありがとうございました! これからもこんな楽しいまち歩きが出来たら良いな、と私達いえまちのメンバーも改めて思いました。 今後のまち歩きの企画にも是非ご期待下さい。

(千住いえまち/宮島 亨)